
「今のシフトで店舗運営に問題はない。スタッフから人手不足の声も上がっておらず、店長自身も特に課題を感じていない。」
そういった店舗でも、人員配置を見直すことで、さらなる成果向上につながる可能性があります。
過去に来客人数を計測し、その結果と現場の経験をもとにシフトを組んでいる店舗が多いと思います。ただ、季節や販促によって来客人数やピーク時間帯が変わると、これまでの配置では、接客や商品補充に必要な時間を十分確保できていない可能性があります。
本記事では、アパレル・小売などの店舗を運営する本部や店舗責任者の方に向けて、人時生産性の考え方と、来客人数に合わせた人員配置の手順を解説します。来客傾向と業務量を照らし合わせ、人数・役割・作業時間を調整することで、同じ労働時間でも成果を高める方法を整理します。
目次
「問題なく回っている店舗」にも、人員配置を見直す余地がある
まず、改善したい課題と施策の仮説を決める
スタッフから人手不足の声が上がっていないことは、現場を理解するための大切な情報です。そのうえで確認したいのは、お客様に対応する余地が、どの時間帯にどの程度あるかという点です。
例えば、レジ対応はできていても、比較検討しているお客様への商品提案まで手が回っていない場合があります。また、店舗全体では人員が足りていても、来客人数が増える時間帯に品出しが重なり、売場で対応できるスタッフが少なくなっていることも考えられます。
こうした状況は、「店舗が混乱している」「残業が増えている」といった形で表れるとは限りません。日々の経験に来客人数と業務の記録を組み合わせることで、見直すべき時間帯を具体的に特定できます。
過去に計測した来客傾向が、今も当てはまるかを確かめる
手集計は、来客人数を把握する方法の一つです。複数日にわたり計測していれば、当時の曜日や時間帯の傾向を知る材料になります。ただし、計測した期間が通常期なのか、セール期間なのかによって、シフト計画を立てる際にその数値を参考にすべきかどうかが変わります。
POSで把握できる売上や購入件数に加え、購入に至らなかったお客様も含む来客人数を継続的に確認しましょう。売上が低い時間帯でも、来客人数自体が少ないのか、来客人数は多いものの購買につながっていないのかによって、人員配置の見直し方は異なります。後者の場合も、人員配置だけでなく、店頭の品ぞろえや欠品、在庫などを併せて確認します。
人時生産性とは?人員配置を考えるための基本指標
人時生産性と人時売上の違い
人時生産性は、店舗全体の総労働時間1時間当たりに生み出す粗利益を示す指標です。本記事では、次の式で扱います。
人時生産性=粗利益÷総労働時間
粗利益は売上から売上原価を差し引いた金額。総労働時間は対象期間に働いたスタッフ全員の労働時間の合計です。例えば、粗利益が30万円、総労働時間が60時間なら、人時生産性は5,000円/人時となります。
売上を総労働時間で割る「人時売上」とは区別します。人時売上は日々の状況を確認する補助指標になりますが、値引きや商品構成による粗利益の変化までは分かりません。
総労働時間には、接客だけでなく、品出し・在庫管理・開閉店作業などの業務も含めます。集計対象とするスタッフや業務、休憩時間の扱いをそろえ、同じ期間の粗利益と照らし合わせることが前提です。
人時生産性の向上は、時間の使い方から考える
人時生産性を上げるには、労働時間を効率よく使い、粗利益につながる対応を増やすことが重要です。例えば、来客人数が増える時間帯に接客へ集中できるよう、事前に商品補充を終えておく方法があります。
総労働時間を減らして数値が上がっても、粗利益の総額が下がったり、必要な売場整備が後回しになったりしていれば、人員配置を見直す必要があります。店舗の成果と、現場で継続できる業務負荷を併せて評価しましょう。
ここからは、人員配置の最適化を「来客傾向の把握」「業務量の整理」「配置の調整」「成果と負荷の検証」の4つの手順で進めます。

図1 来客傾向と業務量から、人員配置を見直す4つの手順
手順1:曜日・時間帯ごとの来客人数と現在の配置を把握する
平均だけでなく、曜日や販促条件による違いを見る
まずは、来客人数・購入件数・勤務人数を、同じ曜日・時間帯の単位で並べます。例えば1時間単位で整理すると、どの時間帯に来客が増え、どこで配置が変わるかを確認しやすくなります。
平日と土日、通常期とセール期間を分け、複数週の同じ曜日を比較しましょう。平均値に加えて、特に多かった日・少なかった日と、その理由も確認します。館のイベント、天候、納品などの条件を残しておくと、次のシフト作成時に参考にできます。
来客が集中する短い時間帯がある場合は、取得できる範囲で、より細かい時間単位や現場の記録も確認します。1時間の合計だけでは、短時間に対応が重なる状況を見落とす可能性があるためです。
勤務人数と、売場で対応できる人数を分ける
シフト表に4人が入っていても、1人が休憩、1人が在庫作業をしていれば、その時間帯に売場で対応できるのは2人です。勤務人数だけでなく、休憩や担当業務を重ねて見ましょう。
確認する情報 | 配置を考える際の使い方 |
来客人数・購入件数・買上率 | 来客人数の増加と購買の変化が重なる時間帯を探す |
勤務・休憩・担当業務 | 実際に売場やレジで対応できる人数を確認する |
納品・品出し・事務作業の予定 | 来客への対応と作業が重なる時間帯を探す |
現場の記録 | 接客や商品補充が後回しになった場面を確認する |
時間帯別の来客人数を、売場対応に充てたスタッフの総労働時間で割ることで、スタッフ1人・1時間当たりの来客人数を把握できます。ただし、実際の接客人数を示すものではないため、業務内容やスタッフの経験も踏まえて判断しましょう。商品の説明に必要な時間や、スタッフの経験も踏まえて解釈しましょう。
手順2:店舗が重視する対応と、必要な業務量を整理する
接客・商品補充・レジ対応で、配置の考え方を変える
適正人員は、来客人数だけでは一律に決まりません。同じ来客人数でも、商品提案や試着対応を重視する店舗と、商品補充や会計を円滑に進める店舗では、必要な役割と業務量が異なります。
重視する対応 | 来客人数と併せて見る情報 | 配置で検討すること |
接客・商品提案 | 接客にかかる時間、試着対応、スタッフの経験 | 来客が増える時間帯に、接客できるスタッフを確保する |
品出し・在庫管理 | 納品量、商品の動き、売場での欠品、補充時間 | 必要な商品を切らさず、補充と接客が重なりすぎないようにする |
レジ対応 | 時間帯別の購入件数、会計にかかる時間、待ち状況 | 購入が集中する時間帯の担当と、応援するスタッフを決める |
品出しは、来客人数が少ない時間に寄せればよいとは限りません。納品時間や在庫状況によっては、早めの対応が必要です。また、来客人数が増えてから購入件数が増えるまでに時間差がある店舗では、接客とレジで配置を厚くする時間帯が異なる場合もあります。
時間を動かせる業務と、動かしにくい業務を分ける
開閉店作業や時間が決まっている納品対応など、実施時間に制約がある業務を先に整理します。そのうえで、一部の品出し、売場整備、事務作業など、前後に動かせる業務を洗い出します。
必要な作業時間は、現場での記録をもとに仮置きします。例えば、同じ1時間内に終える必要がある業務が延べ90分なら、計算上は1.5人分の作業量です。ただし、接客の同時発生や急な対応があるため、この値だけを必要人数にはしません。売場に残す人数や対応できる業務も確認して、配置案を作ります。
手順3:人数・役割・作業時間を組み合わせてシフト調整する
同じ人数でも、担当する業務の時間を変えられる
最初に検討したいのは、来客人数が増える時間帯へ、接客対応のリソースを寄せられるかどうかです。以下は、品出しの実施時間を移し、勤務人数を変えずに接客へあてる人数を増やす例です。
時間帯と来客傾向 | 変更前の役割 | 変更後の役割 |
11〜12時 来客が比較的少ない | 接客3人 | 接客2人・品出し1人 |
14〜15時 来客が多い | 接客2人・品出し1人 | 接客3人 |
上記は人員配置の考え方を示す例です。来客人数が増える前に品出しを完了できる余力があり、納品時間などの条件にも対応できることを前提としています。品出し自体の作業時間は削減せず、休憩は別途確保します。
実施にあたっては、品出しを移した時間帯で他の業務が滞らないか、来客が増える前に補充が完了するかを確認します。作業の移動だけで対応できなければ、出勤・退勤時刻や休憩の組み合わせ、応援配置などを検討します。
「何人いるか」に加えて「誰が何を担当できるか」を確認する
レジ、商品提案、試着対応など、担当できる業務はスタッフによって異なります。人数がそろっていても、特定の対応が1人に集中すると、現場の余力は変わります。
シフト調整では、勤務条件や本人の希望、必要な休憩を踏まえ、時間帯ごとの役割を決めます。混雑時に誰が接客へ戻るか、レジを応援する際に誰へ引き継ぐかまで共有しておくと、現場で動きやすくなります。
例えば、「14時台は商品提案を優先し、緊急性の低い品出しは午前中におこなう」と、変更の理由と具体的な行動を伝えます。計画と実際の配置が違った場合も記録し、次回の見直しに生かしましょう。
手順4:人時生産性と現場の負荷を確認し、配置を更新する
改善したい成果と、守るべき業務を先に決める
変更前に、どの曜日・時間帯で何を改善するか、見直しをおこなう日を決めます。接客を厚くするなら買上率や客単価、商品補充を見直すなら売場での欠品状況など、施策に近い指標も確認します。
買上率は「購入件数÷来客人数×100」で算出します。POSの購入件数は、レシート件数など採用する定義をそろえてください。買上率が上がっても、購入件数や粗利益が減っていないかを併せて確認します。
検証時に見る項目は、主に次の3つです。
成果:人時生産性、粗利益の総額、売上、買上率などがどう変わったか。
実行:予定どおりの役割分担ができたか、必要な品出しや売場整備が完了したか。
負荷:残業や作業の持ち越し、特定スタッフへの負担の集中が増えていないか。
接客できた場面、対応を待っていただいた場面、レジ応援が必要になった時間帯なども、短いメモで構わないので記録として残します。これらは現場で確認する情報です。来客人数やPOSの数値だけで、接客状況や待ち時間のすべてを把握できるわけではありません。
同じ条件で比べ、次のシフトへ反映する
効果検証では、同じ曜日や近い販促条件の期間を比べ、来客人数の違いも確認します。変更前後でイベントや値引き率、商品の構成が変わった場合は、その影響も考慮しましょう。粗利益を時間帯別に把握できない場合は、時間帯別の来客人数・買上率を確認し、人時生産性は日次や週次など集計できる単位で評価します。
成果が出ても、作業の持ち越しや残業が増えていれば、人員配置を調整する余地があります。反対に、改善が見られない場合は、予定どおり実行できたか、課題が配置以外にないかを確かめます。
通常期・セール期などの条件と配置の工夫をセットで残せば、次のシフト作成に使える判断材料になります。季節や販促が変わるたびに来客傾向を確かめることで、シフトの最適化を継続し、判断の属人化の解消につなげられます。
よくある質問
Q1.来客人数に対して、スタッフは何人が適正ですか?
A1.来客人数だけで、共通の適正人員を決めることはできません。接客方針や作業量、売場規模、スタッフの経験によって異なります。まずは、自店で必要な対応と作業ができている時間帯の配置を参考にし、来客の増減に合わせて調整しましょう。
Q2.来客人数の計測や、配置変更の検証は、どのくらいの期間が必要ですか?
A2.最初は4週間程度を、曜日ごとの傾向を複数回確認する実務上の目安にできます。必要な期間は、来客人数や施策内容によって異なります。来客人数が少ない場合や、特別なイベントが重なった場合は期間を延ばすなどして確認し、その後も季節や販促に応じてデータを更新しましょう。
Q3.これ以上スタッフを増やせなくても、見直せますか?
A3.品出しや事務作業の時間、休憩の組み合わせ、役割分担の見直しから始められます。ただし、必要な業務量に対して労働時間が不足している場合は、配置の工夫だけで解決できるとは限りません。業務の簡素化や応援体制なども含めて検討します。
Q4.来客人数の継続的な把握には、どのような方法がありますか?
A4.手集計に加え、AIカメラによる自動取得が選択肢としてあります。ABEJA Insight for Retailでは、来客人数を時間帯別などで把握し、POSデータとの連携によって買上率などと組み合わせた分析が可能です。勤務実績や作業内容は別途整理し、来客人数データと照らし合わせて配置を検討します。
まとめ
人時生産性の改善では、来客人数と業務量を踏まえ、「いつ、誰を、どの業務に配置するか」を見直すことが重要です。店舗が問題なく回っていると感じる場合も、来客傾向と配置を照らし合わせれば、同じ労働時間で成果を高める余地を探せます。
まずは次のシフト作成時に、曜日・時間帯別の来客人数と、勤務・休憩・作業の予定を並べてみてください。見直す時間帯を絞り、実行後の成果と負荷を確認することから、データドリブンな人員配置を始めましょう。
ABEJA Insight for Retailは、来客データの継続的な取得と、カスタマーサクセスによる伴走型サポートを通じて、現場でのデータ活用を支援します。
店舗の来客傾向を可視化し、データに基づいた人員配置や店舗改善を進めるなら、「ABEJA Insight for Retail」をご活用ください。
AIカメラによる来客人数などの自動計測に加え、カスタマーサクセスチームがデータの分析や施策の立案、効果検証まで伴走し、店舗改善に向けたPDCAサイクルの定着を支援します。
店舗改善の次の一手にお悩みのご担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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※ 本記事に記載の計測精度・安定稼働率・データ取得率は、一定期間・一定条件下における実績値であり、設置環境、ネットワーク状況、機器構成、店舗の運用状況等により変動する場合があります。

泉 和成(いずみ かずなり)
株式会社ABEJA
デジタルプラットフォーム事業1部 リテール領域G グループマネジャー
2018年にABEJA Insight for RetailのSales兼Customer Success としてジョイン。
2020年より事業責任者として事業+プロダクトを牽引。
120社以上・1,100店舗以上のデータドリブン店舗経営支援を行い、多くの顧客の店舗経営の変革に携わる。
本ブログでは、「経験・勘・度胸」+データ/テックによる新しい店舗経営の姿を
中心に、記事を監修しています。





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