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AIカメラ導入のROIを可視化する手法|店舗分析の効果を定量・定性で測る

AIカメラを導入する際、「どのくらい売上に貢献できるのか」「本当に費用対効果があるのか」を明確にしたいという声は多くあります。



AIカメラの導入効果は、売上の数字だけでなく、データドリブンな店舗運営の定着といった定性的な変化にも表れます。



本記事では、店舗分析用途でのAIカメラ導入時におけるROI(投資対効果)の考え方を、導入前のシミュレーション方法(定量)と導入後の効果可視化(定量+定性)という、2つの観点から解説します。前者は、導入検討時の効果試算や上申資料の作成に活用できる内容です。後者は、実際の運用フェーズで改善効果を検証し、さらなる成果拡大を図る際の指針として、ぜひ参考にしてください。



なお、過去に掲載した以下の記事では、店舗分析用途のAIカメラを選ぶ際の基準として、「信頼性」「コスト」「活用機能」「活用支援」の4つの観点について解説しています。AIカメラの導入検討を行う際は、あわせて参考にしてみてください。



参考記事:店舗分析向け AIカメラの選び方|導入で失敗しない比較ポイントと重視すべき基準

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AIカメラ導入におけるROIとは





店舗分析用途でAIカメラを導入する場合、一般的には、導入コストに対して売上・利益などの成果がどの程度上回るかをROI(Return on Investment)として評価することとなります。



もう少し具体的に説明しましょう。店舗分析用途において、AIカメラで取得する来客人数や店前通行量といったデータは、入店率・買上率といった売上構成要素の可視化や、売上増加に向けた改善サイクルを進めることを目的として用いられます。したがってROIを評価するうえでは、「来店者数や入店率、買上率といった売上構成要素をデータに基づいて改善した結果、売上・利益がどの程度伸びたか」を判断することが求められるのです。



また、このROIは、短期的な売上・利益の増加を見るだけでは不十分といえます。改善サイクルを通じて得られる売上・利益増加の継続性が見込めるかどうかも含めて評価することが重要です。この継続性については、本稿後半の「導入後:ROIを可視化し、改善サイクルを回す(定量+定性)」にて、定性指標とともに解説します。



ここではまず、定量的な指標として、売上・利益をシミュレーションする方法について解説していきましょう。



導入前:ROIシミュレーションの考え方(定量指標)



AIカメラ導入前にROIを見積もることで、投資の妥当性を数値で説明できるようになります。ここでは、売上構成要素を分解し、改善余地を具体的に仮定したシミュレーションを行います。



売上構成要素の基本式



まず、売上を構成する要素は次の式で表せます。


売上 = 店前通行人数 × 入店率 × 買上率 × 客単価



店舗分析用途でAIカメラを導入する目的は、POSデータだけではわからない店前通行量や入店率買上率といった値を可視化し、施策改善によって、上述した売上構成要素を伸ばしていくことにあります。



ROIシミュレーションのステップ



ROIシミュレーションの主なステップは、以下の5つです。


  1. みなし数値とともに現在値を設定する

  2. 改善想定値の設定を行う

  3. 売上・利益の増分を算出する

  4. コストの考慮をおこなう

  5. ROIの算出式のもと算出を行う



1.みなし数値とともに現在値を設定する



AIカメラ導入前は、店前を通過する人数(通行量)や実際の来客人数が計測できないため、入店率や買上率を実測することができません。そのため、ROIを試算するには、まずこれらの指標を「みなし値(仮の値)」として設定することが出発点になります。



AIカメラ導入前の店舗でも、POSデータや販売実績から「購入件数」や「客単価」は把握できます。しかし、「何人が店前を通過し」「そのうち何人が入店したか」というデータがないため、次のようにみなし値を仮定してROIをシミュレーションします。


  • 店前通行人数(みなし):店舗立地や周辺環境(商業施設内・路面・駅ナカなど)を基に、類似店舗の通行量データやモール全体の来館者数などから推定

  • 入店率(みなし):来客人数 ÷ 通行人数として、一般的な業態平均を仮定(例:10〜25%)

  • 買上率(みなし):購入件数 ÷ 来客人数として、業態平均(例:20〜40%)を参考に設定



なお、こうしたみなし値は、AIカメラベンダーに相談して設定するのも有効です。 AIカメラを多業態に導入しているベンダーであれば、「業態(アパレル/雑貨/食品など)」「立地タイプ(路面店/駅ナカ/アウトレットなど)」「店舗規模」 といった条件別に、平均的な入店率・買上率を把握しているケースが少なくありません。



たとえば、郊外型アパレル店では「入店率15〜25%」「買上率25〜35%」といった目安を提示してもらえる場合もあり、一定の信頼性をもつ“業界平均の仮値として利用できます。



2.改善想定値の設定を行う



みなし値を基準とし、導入後3か月、6か月、1年と段階を分け、どの程度改善できそうかを想定値として設定します。



AIカメラベンダーへの相談や、過去事例・他店舗の改善実績を参考にして、入店率+3%、買上率+2%、客単価+1%など、現実的な範囲(1〜3%)で設定します。



この改善幅は「理想値」ではなく、実施可能な施策があることを前提にした現実的な仮定値とするのがポイントです



3.売上・利益の増分を算出する



次に、みなし値と改善想定値をもとに売上を計算します。



売上構成式は以下の通りです。


売上=店前通行人数 × 入店率 × 買上率 × 客単価



改善想定を反映して売上増加額を算出し、さらに粗利率を掛けることで、利益増加額を求めます。



4.コストの考慮を行う



AIカメラの導入・運用費を明確にし、月額コスト(例:¥10,000/月)や設置費用を含めた総投資額を算出します。



また、複数店舗展開を想定する場合は、スケール時の料金体系や追加コストも加味します。



5.ROIの算出式のもと算出を行う



最後に、以下の式でROIを算出します。


ROI(%)=(利益増加額 − 投資額) ÷ 投資額 × 100

例)初年度:利益増加額 ¥247,200 − 投資額 ¥120,000 ÷ ¥120,000 × 100 = 約106%



このように、導入前にみなし値と改善想定を設定することで、AIカメラ導入による投資効果の見通しを定量的に説明できるようになります。



シミュレーション時の注意点



ROIシミュレーションは、投資回収を保証するための数値ではなく、“改善活動の目標値”を定義するための指標として活用するのが理想です。そのため、以下の2点に注意して、シミュレーションすることを推奨します。


  • 改善幅を過大に見積もらない(実績値+1〜3%が現実的)

  • 粗利率で換算すること(売上ベースではなく粗利ベースでROIを算出)



導入後:ROIを可視化し、改善サイクルを回す(定量+定性)



導入後は、シミュレーションと実際の結果を比較しながら、「想定とのギャップを分析し、改善施策を繰り返す」フェーズに入ります。



ここで重要なのは、「シミュレーション値に届かなかった=失敗」ではなく、「どの要素が想定どおりで、どの要素が想定外だったか」を把握することです。



定量面での可視化



AIカメラで取得できる各変数をもとに、ROIを定量的にモニタリングします。


  • 入店率・買上率・客単価の推移

  • 改善施策実施週と非実施週の差分比較

  • 店舗間でのROI比較(同期間・同施策条件)



このデータを月次・週次で可視化し、「改善が売上にどう寄与したか」を定量的に把握します。特に、売上だけでなく、粗利ベースでのROI推移を見られるようにしておくと、財務的な説得力が高まります。



定性面での可視化



定量的な結果に加えて、店舗運営における「データドリブン文化」の定着度もROIの一部として捉えるべきです。なぜなら、この文化が定着しているかいないかで、改善サイクルを通じて得られる売上・利益増加の継続性が見込めるかどうかが大きく左右されるからです。



以下のような定性的変化が見られた場合、それは、長期的なROI向上に寄与していると考えられます。


  • 店長・SVが週次でデータを見て施策を立案するようになった

  • 現場スタッフが「入店率」や「買上率」を意識して接客を改善した

  • 本部が全店舗データをもとに好調/不調店を素早く把握できるようになった



こうした変化は数値化が難しいものの、長期的なROIに影響を及ぼすため、ユーザーへのアンケート(自己評価)を行うなどで定期的に可視化することをお勧めします。



“ROI未達=失敗” ではない



AIカメラの導入効果は、単発ではなく中長期で磨かれていくものです。



導入前のROIシミュレーションは「理想値」ではなく「改善目標」を可視化するものであり、ギャップを発見するための羅針盤として機能します。



実際のROIが想定に届かない場合も、失敗と決めつけるのではなく、

「入店率は伸びたが、買上率は横ばい」

「客単価は上がったが、通行量が減少」

といったように、どの要素がボトルネックかをデータで見極め、想定値に近づけていくことを心がけるようにしましょう。AIカメラの価値は「数値が目標に届いたかどうか」ではなく、「届かない理由を特定し、改善アプローチができるか」にあるのです。



まとめ



AIカメラ導入におけるROIの可視化は、投資効果を説明するためだけでなく、店舗改善のPDCAを加速させるうえでの重要なプロセスです。



導入前には売上構成要素ごとに改善を仮定したシミュレーションを行い、導入後は定量的な変化と定性的な浸透度の両面からROIを評価します。



「ROIが想定より低い=失敗」ではなく、「どの要素が想定とずれているかを特定し、改善を続けられること」こそがAIカメラ活用の真価です。単なる投資回収の指標ではなく、“継続的な改善の羅針盤”としてROIを捉え、店舗分析の成果最大化に役立ててください。

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