
実店舗を持つビジネスにとって、オンライン(Web広告やSNS)での集客活動が、実際にどれだけオフラインの売上に貢献しているかを把握することは、長年の課題でした。この課題を解決する手法が「来店計測」です。
単に「来店したかどうか」を測るだけでは、来店後の購買に至るまでの行動が見えず、真の店舗改善には繋がりません。
本記事では、来店計測の基本的な定義、仕組み、導入メリットから、従来の計測では見えなかった「購買までの空白」を埋める高度な店内行動分析に至るまでを徹底解説します。
Web広告のROI/ROAS最大化を目指すマーケティング担当者様、データに基づいた科学的な店舗運営を実現したい店舗責任者様にとって、来店計測がどのように売上向上に貢献するのかを、具体例を交えてご紹介します。
目次
来店計測の「定義」とビジネス上の目的
来店計測(Store Visit Measurement)とは、オンライン上での広告やマーケティング施策に接触したユーザーが、実際に実店舗に来店した事実を追跡・計測する手法です。
これは、デジタルとリアルの施策を融合させる「OMO(Online Merges with Offline)」戦略において、極めて重要な役割を果たします。
来店計測の定義:オンライン施策のオフライン成果可視化
来店計測の最も基本的な目的は、Web広告(Google広告、SNS広告、デジタルOOHなど)やメール、アプリ通知などのオンライン施策が、ユーザーに「実店舗へ行きたい」と思わせる効果、すなわち「誘客効果」を定量的に可視化することにあります。
従来のデジタル広告では、クリック数やコンバージョン数(資料請求、EC購入など)が主な成果指標でしたが、来店計測により、オフラインでの「来店」という行動を成果指標に組み込むことが可能になります。
広告投資のROI/ROASを正確に算出する重要性
多くの小売業や飲食業では、依然として売上の大半が実店舗で発生しています。しかし、広告効果測定がEC売上のみに限定されると、広告投資の全体的な貢献度を過小評価してしまうリスクが生じます。
来店計測を導入することで、広告接触者と非接触者の来店率を比較したり、来店した顧客の平均購入額(オフライン売上)を照合したりすることが可能になり、広告投資のROI(投資利益率)やROAS(広告費用対効果)を、実店舗の成果を含めて正確に算出できるようになります。
これにより、経営層への報告の説得力が増し、よりデータに基づいた広告予算の最適化(どの媒体にどれだけ予算を割くか)が可能となります。
来店計測の「仕組み」:どのように来店者を判別・特定するのか
来店計測を実現する技術は複数存在しますが、主要なものは「AIカメラ」と「位置情報(GPS/ビーコン)」の2種類です。それぞれ計測可能なデータや、メリット・デメリットが大きく異なります。
技術 | 計測対象 | 広告接触との照合 | データの種類 | メリット/デメリット |
AIカメラ | 実際に来店した実数 | 不可(基本的には) | 来店者数、属性、店内行動 | メリット: 実数の計測に強い デメリット: 集客施策との紐付けが難しい |
位置情報 | アプリ利用者等のサンプル数 | 可能 | 来店者数(推計)、広告接触後の来店率 | メリット: 広告効果の計測に強い デメリット: 実店舗の全体像把握は推計になる |
AIカメラによる来店計測の、メリット・デメリット
AIカメラは、店舗の入り口や店内に設置されたカメラの映像をAIが解析し、店前通行量、入店率、来客人数を「実数」として正確にカウントできる点が最大の強みです。
メリット
実際に店舗に来た人数の実数を正確に把握できる。
店内の混雑状況や、時間帯別の来店客動向を詳細に分析できる。
店内行動(滞留時間、動線)の分析に優れている。
デメリット
カメラが捉えるのは「来店した」という事実のみであり、その来店者が特定のWeb広告に接触したかどうかを直接照合することはできません。
集客効果を判断する場合、「広告出稿後に全体として来店者数が伸びたか」という大きな視点での検証しかできず、広告が直接的に寄与したかどうかを細かく判断するのは困難です。
位置情報による来店計測の、メリット・デメリット
位置情報に基づく来店計測は、GPSデータやWi-Fi、ビーコンなどを利用し、ユーザーが持つスマートフォンから発信される位置情報を基に、広告に接触したユーザーが店舗の近くに立ち入ったかどうかを特定する技術です。
メリット
広告に接触したIDと位置情報を照合できるため、広告効果による来店(リフト値)を明確に測定できます。広告投資のROI算出に直結します。
デメリット
計測できるのは、位置情報利用を許可しているアプリ利用者など、特定の母集団(サンプル)のみです。よって、計測された来店者数は実店舗の来客実数とは異なります。
実数ではなくサンプル数に基づくため、店舗全体の運営効率(入店率や買上率など)を正確に把握するための指標としては扱いにくい側面があります。
このように、従来の来店計測技術はそれぞれ得意とする領域が異なり、どちらか一方だけでは「広告が効いたこと」と「店舗が実際にどう機能しているか」の両方を包括的に捉えることは困難です
「購入までの空白」を埋める店内分析の必要性
従来の来店計測は、あくまで「店舗に誘導できたか」という集客フェーズの評価に特化していました。しかし、マーケティングの真のゴールは「来店」ではなく「購買」です。
店舗まで誘導できたにもかかわらず、多くの顧客が何も買わずに帰ってしまう場合、その原因は「誘客」ではなく「店内体験」にある可能性が高いです。
従来の来店計測(店舗までの導線計測)では、店内のどこで迷い、なぜ購入に至らなかったのかという「購買までの空白」が可視化できませんでした。
この空白を埋め、来店を確実に売上に繋げるために必要なのが、AIカメラによる高度な店内行動分析です。
例えば、当社の「ABEJA Insight for Retail」は、この来店後の行動を科学的に分析し、店舗改善を可能にするソリューションです。来店計測データと店内行動データを統合し、顧客がレジに至るまでのプロセスを可視化することで、感覚ではない、データに基づいた店舗運営を実現します。
POSデータでは把握できない「購入までの空白」とは
POSデータ(販売時点情報管理)は「何が、いつ、いくら売れたか」は明確にしますが、「なぜ売れたか/売れなかったか」については沈黙します。
POSでわかること:最終的な買上率、平均客単価
POSでわからないこと:来店者のうち、どれだけの人が特定の商品棚の前で立ち止まったか、棚構成変更後にその場所の滞在時間がどう変化したか、なぜ試着室の前で諦めてしまったか
店内行動データを計測し、レジ通過(POS)に至る前の顧客の動きや棚前での意思決定を分析することで、購買を阻害している要因(例:導線がわかりにくい、POPが見づらい、在庫がない)を特定し、店舗改善のPDCAを回すことが可能になります。
データに基づき売上を伸ばす!来店計測の具体的な活用方法
「ABEJA Insight for Retail」をはじめとするAIカメラを活用したソリューションは、来店者数計測に加えて、顧客の属性や店内行動を分析し、店舗運営のPDCAサイクルに組み込むための多岐にわたるデータを提供します。
ここでは、データに基づき売上を伸ばす具体的な活用方法をご紹介します。
1. 誘客効果の検証とVMD・店舗設計の改善
「来店計測」の入り口となるのが、店舗への誘客効果の検証です。
店前通行量と入店率を計測することで、集客施策(デジタル広告、OOH、店頭POPなど)やVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の変更が、実際にどれだけ通行人を店内に引き込めたかを測定します。
店前通行量:店舗の前を通過した人数(母数)。
来客人数(入店者数):実際に店舗に入店した人数。
入店率:来客人数 ÷ 店前通行量。
POSデータと連携し、店舗ごとの入店率・買上率を自動算出することで、店舗の集客力と接客力(購買力)を店舗間や期間で比較し、課題のある店舗に優先的にリソースを投下できます。
2. 来客属性の分析と商品ラインナップの最適化
来店者の属性が、店舗が想定するターゲット層と合致しているかを検証することは、売上向上に不可欠です。
AIが来客属性(年代・性別など)を推定し、データを収集することで、以下のような検証が可能になります。
集客したいターゲット層(例:20代女性)は誘客できているか。
実際に購入している顧客層と、来店している顧客層に乖離がないか。
時間帯や曜日によって、来店する属性がどのように変化しているか。
この分析結果に基づき、商品ラインナップや店頭プロモーションがターゲット層に合致しているかを検証し、ミスマッチがあれば速やかに最適化を図ることができます。
3. 滞留分析による購買行動阻害要因の特定
店内における顧客の滞留分析は、購買意欲の高さを示す重要な指標です。
AIカメラは、特定の棚やコーナー、プロモーションスペースにおける滞留人数を可視化します。
ある施策(例:季節商品の展開、棚のレイアウト変更)を実施した前後で、対象エリアの滞留人数がどう変化したか。
集客効果が高いにもかかわらず、買上率が低い店舗では、どのエリア(レジ待ち、試着室前、特定の商品棚)でボトルネックが発生しているか。
これらのデータから、VMDや動線設計、什器の配置が購買行動を阻害していないかを検証し、売上や買上率に貢献する改善サイクルを回します。
4. AI自動分析とPDCA機能で実現する継続的な改善サイクル
データ収集だけでなく、その活用効率を高める機能も重要です。
「ABEJA Insight for Retail」では、予実管理と施策管理機能を提供するPDCA機能とAIがデータに基づく示唆を与えてくれるAI自動分析を活用することで、データ活用を専門としない現場スタッフでも継続的に改善サイクルを回せるように支援します。
PDCA機能:施策の実施期間設定、施策前後のデータ比較、目標達成度の追跡を自動化し、過去実績に基づいた予実管理を実現します。
AI自動分析:AIがデータの中から特異な変化(例:突然の入店率の低下、特定のエリアでの滞留時間の異常増)を自動で検知し、改善のヒントを提案。これにより、データサイエンティストがいなくても、売上に繋がる改善サイクルを効率的に回すことが可能です。
まとめ:来店だけでなくその後の購買までの遷移を包括して、来店計測を行いましょう
来店計測は、オンラインとオフラインを結びつけ、広告効果を正確に測定するための強力なツールです。しかし、真の成功は「来店」のその先、「購買」にあります。
従来の広告効果測定に留まるのではなく、AIカメラを活用した高度な店内行動分析を組み合わせることで、集客施策(広告効果)の検証と店舗運営の改善という両輪を回すことが可能になります。
来店計測は、実店舗のマーケティングにおける「羅針盤」であり、特に来店後の行動データ(店内インサイト)の可視化は、データドリブンな店舗運営、そして今後のビジネス成長に不可欠です。
集客から購買まで、シームレスなデータ連携を実現し、売上を最大化する店舗改善にご興味がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
※ABEJA Insight for Retail の導入成功事例
ABEJA Insight for Retailのご紹介
ABEJAでは小売店舗向けのストアアナリティクスを提供しております。現在、600店舗以上で導入されており、分析精度の高さとデータ分析サポート体制において高い評価をいただいております。
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