
VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは、商品の見せ方や売場のレイアウトを工夫し、お客様が商品を見つけやすく、選びやすく、購入しやすい売場をつくる取り組みです。
VMDはすでに多くの店舗で日常的に行われています。一方で、「変えた結果、売場が良くなったのかどうか」を数字で説明できるケースは多くありません。売上は天候や季節、販促の影響も受けるため、売上だけを見ていると、VMDの変更が効いたのかどうかを切り分けにくいためです。
本記事では、ABEJA Insight for Retailの導入企業様の事例をもとに、VMDの成功例を「何を変えたか」と「どの数字で効果を確かめたか」の2点で整理します。
導入企業 | 変えたもの | 確かめた数字 | 結果 |
株式会社exflora様(ハナノバ) | 看板などの店頭の見せ方 | 入店率 | 看板等のVMD改善で入店率が1%向上 |
東京シャツ株式会社様 | 入口正面への主力商品の配置など | 入店率・買上率 | 入店率・買上率の向上を数値で実証 |
株式会社三陽商会様(マッキントッシュフィロソフィー) | 棚ごとの見せ方 | 棚ごとの接触率・買上率 | 特定の棚で購入の割合が平均の倍の6%、売上2.3倍 |
株式会社トヨタオートモールクリエイト様(トレッサ横浜) | 展示車種・ひな壇・アーチ | 立ち寄り率 | 立ち寄り率をもとに、売れる展示方法を特定 |
株式会社ICI石井スポーツ様 | 新設コーナーの商品構成、棚の高さ・配置 | 来客の属性・買上率 | 新設コーナーの有効性を数値で証明 |
株式会社ナップス様 | 店内のPOP | 買上率 | POPを大幅に削減しても買上率は上昇傾向、人件費は従来の10分の1程度に |
株式会社ビジョンメガネ様 | 客層に合わせた商品構成・配置 | 来客属性・買上率 | 施策の継続で買上率が上昇し、閑散期も売上を維持 |
株式会社チュチュアンナ様 | 全店舗での改善サイクル | 入店率・買上率 | 買上率が1.2ポイント上昇 |
本記事に関連して、下記記事も併せてご覧ください。
-「店舗VMD」:VMDの基本的な考え方について
-「VMDの効果検証」:効果検証の具体的な手順
目次
VMDの成功例をチェックする際の視点
他社の成功例を自社の売場に活かすには、結果の数字だけでなく、次の3点を確認することが役立ちます。
確認すること | 理由 |
何を変えたか | 店頭・棚・店内のどこを変えたかによって、効果が表れる指標が異なるため |
どの数字で確かめたか | 売上だけでは、天候や販促など他の要因の影響と区別しにくいため |
何と比べたか | 変更前との比較なのか、変更していない店舗や時間帯との比較なのかで、数字の意味が変わるため |
変えた場所と、効果を確かめる指標の対応は、おおむね次のとおりです。
変えた場所 | 主な変更の例 | 効果を確かめる指標 |
店頭(ウィンドウ・入口・看板) | 看板、入口正面の商品、マネキン | 入店率(店前通行量のうち、入店した人の割合) |
棚・展示・コーナー | 棚の位置、展示の方法、コーナーの新設 | 立ち寄り率(来客した人のうち、その売場に立ち寄った人の割合) |
店内の商品・情報 | POP、商品構成、陳列の量 | 対象商品の買上率(売場に立ち寄った人のうち、対象商品を購入した人の割合)、対象商品の購入件数(来客した人のうち、購入した人の数) |
各社の事例も、上記の視点に沿ってご紹介します。

店頭の見せ方を変え、入店率で確かめた例
看板などファサードの変更を、入店率のA/Bテストで確かめた例(株式会社exflora様)
花の小売店「ハナノバ」を運営する株式会社exflora様では、通行量や来客人数の増減を「肌感」に頼らざるを得ず、施策の効果を客観的な数値で判断する根拠が不足していました。
店前通行量と来客人数を計測し、入店率を軸にしたリアルA/Bテストを行えるようになった結果、看板などのVMD改善で入店率が1%向上したことが確かめられています。あわせて行った声掛けでは、入店率が3%向上しました。
店頭の看板のような、一見定量的に評価しにくい変更でも、店前通行量と入店率を計測していれば、効果を数字で確かめることができます。また、声掛けと看板の変更をそれぞれ別の施策として効果を確かめている点も、参考になります。
→ 詳しくは株式会社exflora様の導入事例をご覧ください。
入口正面の商品配置を、入店率と買上率で確かめた例(東京シャツ株式会社様)
東京シャツ株式会社様では、従来の評価指標がPOSデータによる売上のみで、入店率や買上率にもとづく客観的な店舗評価ができていないことが課題でした。
規模の異なる複数の店舗で、入口正面への主力商品の配置や、デジタルサイネージの導入などの施策を行い、入店率と買上率の向上が数値で実証されました。現場のスタッフが自らデータを確認して仮説を検証する文化が定着し、想定と異なる入店の経路が分かるなど、新たな気付きが店舗の改善につながっています。
→ 詳しくは東京シャツ株式会社様の導入事例をご覧ください。
棚と展示を変え、立ち寄り率と買上率で確かめた例
棚ごとの接触を可視化し、特定の棚の売上を2.3倍にした例(株式会社三陽商会様)
株式会社三陽商会様のマッキントッシュフィロソフィーでは、百貨店を中心とした展開で店舗ごとのレジがないことも多く、自前のレジがある店舗でも「売れた商品」のデータしか得られていませんでした。スタッフの経験や勘による推測と実態の差を埋め、VMD改善の根拠となるデータが求められていました。
通行量や来客属性、棚ごとの接触率を可視化してVMDを見直した結果、特定の棚では購入に至る割合が平均の倍にあたる6%まで向上し、その棚の売上は2.3倍になりました。数値を共通言語にしたことで、店舗と本部のコミュニケーションが円滑になり、現場が主導して改善サイクルを回す組織に変わっています。
→ 詳しくは株式会社三陽商会様の導入事例②をご覧ください。
展示の方法を、立ち寄り率で比べた例(株式会社トヨタオートモールクリエイト様)
トレッサ横浜を運営する株式会社トヨタオートモールクリエイト様では、月間120万人の来館者を、併設するオートモールへどのように誘導し、新しいクルマに触れる機会をどう増やすかが課題でした。従来は年に1度の人手による計測のみで、継続的なデータの取得は行えていませんでした。
立ち寄り率を計測した結果、通路側より店舗内を通る人のほうが、立ち寄り率が2倍以上高いことが分かり、展示車種の変更や、ひな壇・アーチなどの展示工夫につなげています。施策効果をリアルタイムに把握してPDCAサイクルを短くできたことで、他の店舗からも導入を希望するお声をいただいております。
→ 詳しくは株式会社トヨタオートモールクリエイト様の導入事例をご覧ください。
来客傾向をもとに、コーナーの商品構成を決めた例(株式会社ICI石井スポーツ様)
登山・スキー用品の専門店を展開する株式会社ICI石井スポーツ様では、店舗運営がブロックリーダーの経験や勘に頼る裁量制で、ノウハウが企業として蓄積されないことが課題でした。
来客属性や行動を計測した結果、若年層は買上率が低い一方で、秋口にはタウンユース目的の来店が増えることが分かり、新設したコーナーの商品構成に反映しました。新設したコーナーの有効性を数値で示せたことで、根拠にもとづく店舗改善のサイクルが確立されています。棚の高さや配置を変えたときの変化も、データで確認できるようになりました。
→ 詳しくは株式会社ICI石井スポーツ様の導入事例をご覧ください。
店内の情報量と商品構成を変え、買上率で確かめた例
POPを減らしても買上率が落ちないことを確かめた例(株式会社ナップス様)
オートバイ用品の専門店を展開する株式会社ナップス様では、店づくりや施策が集客や売上にどう貢献しているかを正確に把握できていませんでした。POSデータで購入の件数は分かっても、来客人数が分からないため、購入に至らなかった来客がどの程度いるのかを把握できず、改善策を検討することが難しい状況でした。
買上率を計測したところ、想定を大きく下回っていることが分かり、改善の余地が明確になりました。そこで、データにもとづき店内のPOPを大幅に削減・シンプル化したところ、買上率は下がらず、むしろ上昇傾向を示しました。POPの準備作業も効率化され、残業代を含む人件費は従来の10分の1程度まで削減されています。
株式会社ナップス様の事例は、売場の要素を減らしても成果が落ちないことを数字で確かめた例です。数字で確かめられるからこそ、現場の負担を減らす判断にも踏み切れています。
→ 詳しくは株式会社ナップス様の導入事例をご覧ください。
想定と違う客層に合わせて、商品構成を変えた例(株式会社ビジョンメガネ様)
株式会社ビジョンメガネ様では、VMDに注力する方針がありながら、棚の前の通行量や滞在時間を客観的に把握する手段が不足しており、店舗改善の議論が主観的な意見にとどまっていました。
計測の結果、手動での計測の約10倍の来店があったことが分かり、想定以上に20〜30代の男性が来店していたことも判明しました。この客層に合わせて商品構成や配置を見直し、施策を継続した結果、買上率が上昇し、閑散期でも売上を維持できています。
株式会社ビジョンメガネ様の事例では、来客属性を計測したことが、「誰に向けた売場か」という前提を見直すきっかけになっています。
→ 詳しくは株式会社ビジョンメガネ様の導入事例をご覧ください。
1店舗の改善を、全店舗の仕組みとして展開した例
入店率と買上率に焦点を当て、全店舗の改善サイクルにした例(株式会社チュチュアンナ様)
株式会社チュチュアンナ様では、POSデータ中心の店舗運営を行っており、入店率や買上率など売上以前の顧客行動が分からず、具体的な改善策を立てにくいことが課題でした。先に導入していた海外製のAIカメラでは、不具合によるデータの欠損や、活用ノウハウの不足も表面化していました。
ABEJA Insight for Retail導入後、異常検知と保守体制によってデータの欠損が解消され、カスタマーサクセスチームの伴走支援によって、入店率・買上率の向上に焦点を当てた改善サイクルが定着しました。その結果、買上率が1.2ポイント上昇しています(250店舗に換算すると約4億円規模の売上効果と試算)。
→ 詳しくは株式会社チュチュアンナ様の導入事例をご覧ください。
購買までの流れを可視化し、現場が自ら動く店舗にした例(全日空商事株式会社様)
空港で「ANA FESTA」を展開する全日空商事株式会社様では、店前の通行人数、来客人数、棚への立ち寄り、購入という一連の流れが可視化されておらず、現場の経験や勘に頼った店舗運営が行われていました。
店前通行量や来客属性、棚の前での行動を可視化したことで、客観的なデータにもとづいて施策の実行と改善を繰り返す運営体制に転換し、現場のスタッフが自らデータを見て考え、動く仕組みを構築しています。
→ 詳しくは全日空商事株式会社様の導入事例をご覧ください。
成功例に共通する、効果の確かめ方
ここまでの事例から、VMDの効果を数字で確かめるときに共通するポイントを整理します。
変更箇所に対応する指標で評価する
株式会社exflora様(ハナノバ)は看板の変更を入店率で、株式会社トヨタオートモールクリエイト様(トレッサ横浜)は展示の変更を立ち寄り率で、株式会社ナップス様はPOPの変更を買上率で確かめています。株式会社チュチュアンナ様も、売上だけでなく、入店率・買上率の向上に焦点を当てて改善サイクルを回しています。
変更箇所と評価する指標をそろえることで、VMDの変更が効いたのかどうかを、他の要因と切り分けて判断しやすくなります。
比べる相手を決めておく
株式会社exflora様(ハナノバ)はA/Bテスト、株式会社トヨタオートモールクリエイト様(トレッサ横浜)は通路側と店舗内という場所の違いで比較しています。変更前後の時期の比較だけでは、同じ時期に行ったセールや、館のイベントの影響と区別しにくいケースもあります。比べる期間や店舗の条件をそろえておくと、数字の読み違いを防ぎやすくなります。
1つずつ確かめてから広げる
株式会社exflora様(ハナノバ)は声掛けと看板の変更の効果をそれぞれ数字で示しており、株式会社チュチュアンナ様は効果を確認した改善の進め方を全店舗に展開しています。複数の変更を同時に行うと、どの変更が効いたのかが分かりにくくなるため、効果を確認した施策から広げていく進め方が有効です。
なお、各社の数字は、それぞれの店舗の立地や客層、施策内容によって得られた結果です。同じ変更をすれば同じ効果が出るとは限りません。自社の売場で試すときは、小さな範囲で効果を確かめてから広げることをおすすめします。

本記事の総括
VMDの成功例は、「何を変えたか」「どの数字で確かめたか」「何と比べたか」の3点で読むと、自社の売場に活かしやすくなります
店頭の変更は入店率、棚や展示の変更は立ち寄り人数や立ち寄り率、店内の商品構成や情報の変更は買上率や対象商品の購入件数など、変更内容に対応した指標を組み合わせて確認することが有効です。
株式会社ナップス様の事例のように、要素を減らしても成果が落ちないことを数字で確かめられれば、現場の負担を減らす判断にもつながります
各社の結果は、それぞれの店舗の条件のもとで得られたものです。自社で試すときは、小さな範囲で確かめてから広げることをおすすめします
ABEJA Insight for Retailで、VMDの効果を確かめる
ABEJA Insight for Retailは、AIカメラで店前通行量・来客人数・来客属性・滞留を計測し、入店率や立ち寄り率、買上率といった指標で売場の変化を確認できる店舗解析サービスです。600店舗以上で稼働しています。
確かめたいこと | 使う機能 |
店頭の変更で、入店する人が増えたか | 店前通行量・来客人数(入店率) |
棚や展示の変更で、立ち寄る人が増えたか | 滞留分析(立ち寄り率) |
客層に合った売場になっているか | 来客属性 |
施策ごとの効果を記録し、振り返れるか | PDCA機能(施策の登録・予実の確認・振り返り) |
計測した数字の分析や施策の振り返りは、カスタマーサクセスチームが伴走して支援します。社内に分析の担当者がいない場合でも、データを売場の改善に活かす仕組みづくりから始められます。
店舗改善の次の一手にお悩みのご担当者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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泉 和成(いずみ かずなり)
株式会社ABEJA
デジタルプラットフォーム事業1部 リテール領域G グループマネジャー
2018年にABEJA Insight for RetailのSales兼Customer Success としてジョイン。
2020年より事業責任者として事業+プロダクトを牽引。
120社以上・1,100店舗以上のデータドリブン店舗経営支援を行い、多くの顧客の店舗経営の変革に携わる。
本ブログでは、「経験・勘・度胸」+データ/テックによる新しい店舗経営の姿を
中心に、記事を監修しています。





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